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★諸注意★
・剣風帖で京一×主人公です。
・主人公の名前はデフォルトの「緋勇龍麻」。
・剣風帖第六話『恋唄』の話。
・それでも宜しければ続きからどぞ。





気ばかり急いた。
地図に印が付いていた場所――――廃屋前で集まる仲間達を待つ数分が、やけに長く感じた。
お待たせ、と、龍麻の為に皆全速力で走って駆け付けてくれているというのに、待って居られなくて何度も単身で飛び込もうとして…思い留まった。龍麻が捕まった相手なのだから、と、慎重になれと理性が諭してきたからだ。

もどかしい。

早く。早く。早く。
焦燥を表に出すことだけは堪え、唯々表情を消して待った。
醍醐だけが、そんな感情に気付いていたらしく、常であれば京一が仕切るであろう殆どの事を引き受けて皆を動かしてくれた。伊達に付き合いは長くないな、と込み上げる焦燥とは別の意識で感謝が広がる。

「よし、気を付けて行こう」

力強く告げた醍醐に、皆が深く頷いた。それで、やっとのこと京一も息を吸った。

「よっしゃぁ、行くぜ!」

先頭切って飛び込んで行く後ろ姿に、勇気付けられたように皆も後に続いた。

――――絶対に龍麻を助ける。

その一念で襲い来る屍鬼を幾多も倒した。
愛刀で敵を屠りながら、京一の頭の中には血濡れた龍麻の泣きそうな顔が浮かんでいる。

(間に合え!間に合え!間に合え!)

自分から龍麻を奪うなんて許さない。
離れていくなんて許さない。

(龍麻…!)

失うなんて、許さない。

地下へと続く階段を駆け降りながら、京一は乱暴に剣を奮った。

 

 

辿り付いた地下室。先陣を切って飛び込んだ京一がピタリと動きを止めた。続いた仲間達も、足を踏み入れた途端に凍り付く。
そこら中に大小様々な試験管が乱立し、その中には薄気味悪い色の液体に包まれた異形の姿があった。暗がりには動物らしきものから、動物ではない、確実に人であったであろう体の一部が山積みになっており、部屋に点った裸電球の光りにてらてらとした光を返していた。
あまりの惨状と酷い腐臭に、皆が一様に顔を背けた。

「龍麻あぁっ!」

異常な空気に呑まれかけた中で、裂帛の気と共に声が上がった。
ハッと顔を上げると、京一が単身駆け出して行く姿があった。その先へと視線を転じれば、手術台と思しき物の傍で、怪物から何かを守るようにしている者の姿がある。間違いようもない、探し人の姿だった。
龍麻、と誰ともなく叫んで、一足先に怪物と対峙した京一に続いた。背後に彼を守るように相対する。

「葵…、舞子っ」

治癒の能力を持つ二人を、弱々しい声が呼んだ。

「おねがい…紗夜を、っ」

頼む、と悲痛な声を出す彼の腕の中には、傷付き額から血を流している紗夜の姿があった。

「俺を、かばって……おねがい、おねがいだからっ」
「大丈夫。大丈夫だから、落ち着いて龍麻」
「そ~よ~。舞子と葵ちゃんがいるんだから、心配ないんだから~」

酷く動揺している龍麻を宥めながら紗夜の治療にあたる二人だが、龍麻の動揺が移ったかのように力のコントロールが出来ずになかなか紗夜の傷は塞がらない。次第に焦りが目立ち始めた頃、ふと気配を感じて顔を上げると、前線にいた筈の京一が四人の前に立っていた。

「…京一、!」

よぉ、と場にそぐわない軽い声に、龍麻の表情も柔らかみを帯びた。それでも緊張の取れない声で名前を呼ぶので、京一は目線を合わせるようにしゃがみ込んで、にこりと笑った。そのままくしゃりと頭を撫でてやれば、あからさまな安堵の溜息。
様子を窺っていた葵達に、こっちは任せろ、と目で合図を送りながら、京一は震えの残る肩を抱き寄せた。

――――龍麻の傍にいてやれ。

襲い来る異形を躱しながら、京一は醍醐に戦闘の輪から押し出された。自分だけ遊んでいられるかと反論した京一に、お節介な友人は、美里達が集中出来るように助けてやれという意味だが?、とニヤリと笑った。
友人は、龍麻の様子を気に掛けながら闘っていた事に気付いていたのだ。そして他の闘っている仲間に遠慮している事も。
だからこそ、葵達の手助けという名目を投げて寄越した。遠慮なく傍についていてやれ、と意味を込めて。

(大将、感謝するぜ…)

今、腕の中には確かに探していた温もりがある。
夢の中のように上着はなく、煤汚れてはだけシャツを羽織っただけではあるが、目を焼くような赤はない。
弱々しいが、規則的に続く呼吸に、京一はそっと息を吐いた。
またこの手に戻った、温もりを感じながら。
龍麻が戻ってきた。生きていた。
その実感を確かめるように腕に力を込める。
治療に専念出来たお陰か、紗夜の怪我も癒え始め、もう何も心配いらない、そう胸を撫で下ろした。
まさにその瞬間。

――――鬼が嗤った。




まだまだ矢印です。え?矢印かよこれって?
京一的にはまだ友情だと思ってます。はい。
醍醐が素晴らしくイイトコ取りな気がしなくもないですが、うちでの役回りは皆のフォロー役です。
そしてやっと主人公登場。悲惨な状態で。
ゲームでは、正直良く戦闘に参加出来たよな数日間飲まず食わずで、と思っていたのでこの回もお姫様ポジです。

続きます。

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