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★諸注意★
・剣風帖で京一×主人公です。
・主人公の名前はデフォルトの「緋勇龍麻」。
・剣風帖第六話『恋唄』の話。
・それでも宜しければ続きからどぞ。





週が明け、早朝の歌舞伎町を少年がふらりふらりと、しかし躊躇いの無い足で歩いて行く。
刀剣類が入っているのであろう袈裟袋を片手に、寝静まった街の路地を歩く。
ギラギラと殺気立ったその表情に、うっかり目を合わせた酔っ払いが小さく悲鳴を上げて逃げて行った。常であればそんな者歯牙にもかけないが、その時はハッとしたように少年は顔を上げ、辺りを見回した。

「いっけね…学校……」

少年――――京一は、袈裟袋を肩に担ぎ直し、先程の荒れ方が嘘のように年相応の表情を見せ、慌てたように踵を返した。

 

 

おはよう、と掛かった声に陽気に応え、京一は微笑を浮かべる葵に手を挙げた。
今日も早いのね、と笑う葵にいつもの調子で、ひでぇな、と大袈裟に嘆いて見せながら、登校してきた小蒔にまた、今日は雨なんじゃ、と笑われ、眉を顰める。遅れて登校してきた醍醐にも似たようにからかわれ、たまには俺だって、と唇を尖らせた。

いつも通りだ。
いつも通りの掛け合い、面子。

でも、足りない。

意識は常に空席に注がれ、きっと何でもない顔をして登校してくる筈だ、と虚しい願望を笑みの下に隠した。
しかし、結局それは叶う事はなかった。
朝のホームルームが始まっても、昼休みが始まっても、教室の空席は埋まらなかった。
理性が、当たり前だ、とせせら笑う。あれだけ探し回っても見付からなかったのだから、と。
寝食も忘れ、唯々あの優しい微笑みを探して新宿中を駆けずり回ったが、京一には友人を――――龍麻を、見付ける事は出来なかった。
何か遭ったのは明白だ。
自分一人焦って探すより、仲間に相談して手分けして探した方が早い事くらい判っているが、その相談をする時間すら惜しく感じてしまう。本当は学校すら無視して捜索に没頭しようとも思っていたが、龍麻に続いて自分までもが姿を消せば余計な心配をかけてしまう、と考え直し、連日の疲れに気付かぬ振りをして登校した。
時間が経つ程に、主の居ない空席が、龍麻の不在をありありと見せ付けているようで暗澹たる気分になっていく。京一のそれが伝播したかのように醍醐達の表情も暗く陰欝とし始め、放課後、誰ともなく件の空席を囲むように顔を付き合わせた。

「龍麻、今日も来なかったね…」

口火を切ったのは小蒔だった。
沈黙に耐え兼ねたようにぽつりと漏らし、弱々しく俯いた。

「マリア先生にも訊いたのだけれど、何の連絡も入っていないそうよ…」
「龍麻が何の連絡もなしに意味もなく休み続けるとは考え難いな…やはり何か遭ったか」

家に行って見よう、と沈痛な面持ちで頷いた仲間に、三人も数日前の自分と同じように慄然とするのだろう、と京一はぼんやりと思った。家を知っているな、と醍醐に尋ねられ、緩慢に頷く。無表情の京一に醍醐は思案げに顎を撫でたが、京一がさっさと教室のドアの方へ歩いて行ってしまうと、慌てたように皆を小蒔が急かし始め、醍醐は思考を中断する他なかった。
あからさまとまでは言わないが、自分に気取られる程に京一が内心の動揺を抑え切れていない事が醍醐には気に掛かった。何か無茶をしたな、と気付いても、京一が自分達にまで心配をかけさせまいとしている事も判っているので、醍醐に出来る事は気付かぬ振りをしてやる事だけだ。
短くはない付き合いの中、京一がそんなにも惹かれた人間は初めてなのではないかと、醍醐は黙々と先頭を切る背を見つめた。
と、不意に京一が足を緩めた。
小蒔と葵が気付かず数歩通り過ぎた所で、あの!、と声が掛かった。

「紗夜ちゃん?」

京一が駆け寄ってきた少女に目を見開いた。どうしたんだ、と、常と変わらぬ調子で笑いかければ、荒い息を整える間もなく紗夜が必死の形相で京一を見返した。

「龍麻さんを…龍麻さんを助けて下さい!お願いします…っ!」
「何…?」

一瞬にして表情を強張らせた京一へ怯えた風に一枚の紙を押し付けると、紗夜は踵を返した。おい、と呼び止めるが、振り切るように駆け出してしまい、あっという間に見えなくなってしまった。

「あの人…」
「龍麻を助けてって…」
「…彼女は何か知っているらしいな」
「え?」

紗夜の去った方を見遣っていた葵と小蒔に、醍醐が苦く告げた。押し付けられた紙を無言で広げている京一の手元を覗き込む彼に、二人はサッと顔色を変えた。同様に覗き込み、目を見開く。

「これ…品川の地図だ」
「このバッテンの場所に龍麻が…?」
「多分な。何があるか判らん。出来るだけ他の連中にも声をかけてから行こう」

頷いた二人へ、頼む、と告げ、自らもまた連絡を取ろうとPHSを取り出しながら、醍醐はちらりと京一に視線を走らせた。無言で、無表情で、地図を見入るその様子に、京一の内包する怒気が見えた気がして、無茶をしてくれるなよ、と醍醐はひっそりと嘆息した。





ごめんなさい。まだ矢印です。
女子より男子の方が気遣い屋なのは何故だ。京一も醍醐も。
ていうか京一がだいぶ龍麻好き過ぎやしないだろうか?
そしてこのゲームのヒロインが完璧に龍麻だと管理人は勘違いしているに違いない。
いや、好きですよ美里さん。…うん。

続きます。
 

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