・剣風帖で京一&主人公です。
・主人公の名前はデフォルトの「緋勇龍麻」。
・まだ苗字呼び時代のある日。
・それでも宜しければ続きからどぞ。
キンコンカンコンと軽やかなチャイムが鳴ると同時に、チャイム以上の軽やかさを含んだざわめきがあちらこちらで広がった。
三年C組の片隅でも、机に突っ伏していた男子生徒が、うん、と身を起こして背伸びをしていた。頬についた机の跡を片手で摩りながら、斜め前に座っている者へと視線を向ける。
「緋勇、ラーメン食いに行こうぜ」
腹減った、と素直に口にすると、くすりと微笑する気配がした。
机の上の教科書やノートを学生鞄の中に片付けこちらを振り返った顔には、やはり小さな笑みが浮かんでいた。
「行こう」
立ち上がった京一に倣って立ち上がりにっこりと笑む緋勇に、京一もまた、おぅ、と愛刀の入った袈裟袋を肩に担いだ。
揃って教室を出ようとする二人の背中に掛けられた、また明日、に同じ言葉を返しながら、今日は何味にしようかと話し合う時間が酷く穏やかで、最近京一はふと背中にこそばゆさを感じる時がある。
それは決して嫌なものではなくて、寧ろ、ずっと欲しかったものが手に入った時の満足感に似たもので。
話し掛ける。
唯それだけで、ふわりと緋勇が笑うから、また嬉しくなって話し掛ける。
――――それの繰り返し。
やれ醍醐や小蒔が口煩いだの、どこぞのラーメン屋がウマイだの、他愛のない会話を続けながら街中を歩く。雑踏に消えてもおかしくないような小さな声なのに、どうしてかすんなり緋勇の言葉は耳に滑り込んできて、尚且つ心地好い。
無口ではないけれど、京一に比べれば圧倒的に口数の少ない彼。それが酷く勿体ないと思う。もっと喋れば良いのに、と。
国語や古典の授業の際、緋勇が朗読している声を聞くだけで怠い気分が浮上するぐらいなのだから、普段からもっと口数が多ければ楽しいのに。
残念ながら、闊達に話す緋勇を想像出来る程、己の想像力は逞しくはなかったけれど。
「京一?」
どんなんかなぁ、と思わず口にしてしまった言葉に隣を歩いていた緋勇が首を傾げた。
「…いや、味噌バターラーメンにバターをトッピングしたらくどいかなってね。どう思う?」
はっとして、慌てて笑って顔を繕った。まさかお喋りな緋勇を想像してました、なんて言える訳がない。
京一の内心の動揺を見抜いてか、じっと黒い双眸がこちらを見た。しかし、次の瞬間にはふっとそれが細められ、口許にも柔らかな笑みが浮かんだ。
「くどかったら…スープを追加したら?」
手伝うから、と告げ、何事もなかったかのように前を向いた彼に、京一も敢えて、そうだな、と頷きだけを返した。
緋勇はきっと、京一が誤魔化した事に気付いている。
それなのに詮索一つせず、緋勇が見て見ぬ振りをしてくれたから、妙な想像はこれで終わりにしよう。
もっと喋って欲しいなら、自分から話し掛ければ良いのだ。話し掛ければ、緋勇は応えてくれるのだから。
「…なぁ、緋勇」
何と無く呼び掛けて見ると、思った通りさらさらの黒髪を流しながら傾げられる頭。
「京一?」
どうした?、と微笑んで京一を覗き込む仕草と柔らかに呼ばれた自分の名に、京一は満足そうに相好を崩した。
「いーや、何でもねぇよ!」
そうして片腕を緋勇の肩に回すとぐいっと自分の方へ引き寄せた。
じゃれつく京一を邪険にすることなく、くすくす、と軽い笑い声を立てた緋勇は、危ない、と一言だけ窘めて、また可笑しげに笑った。
その時。
――――笑い声が一番好きだな、と思ったのは『気の迷い』の所為にしておこう。
母猫と子犬(大型犬)の図。
うちのひー様は何考えてるか判らない所が猫っぽいと思います。ツンデレじゃないけれど。むしろ基本デレデレだけれど(笑)
うちの京一の龍麻の何処が好きランキングは、1位は強さだろうけれど、2位は声か笑顔だと思います。メロメロか!(笑)
もう、早くくっつけば良いのに。
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