★諸注意★
・尚隆×六太です。
・三官吏も出ます。結構出張ってます。
・ほんのり帷湍×朱衡臭さもあったり…します。
・基本尚六がイチャついて終わります。
・それでも宜しければ続きからどぞ。
「あいこんたくと?」
何だそれは、と抱えていた書簡を机案の上に降ろしながら帷湍は首を傾げた。その視線の先には少し離れた卓の上で行儀悪く饅頭を頬張る小さな少年が一人。
「目の合図。目と目が合っただけで相手の考えを察したり、逆に伝えたりする事、かな」
それが?、とは帷湍の目の前から。
広げた地図に筆で印を付けながら書簡をぱらりと広げて、仏頂面の王が一度、うん、と背伸びをした。
「出来そうだなあ、と思って。帷湍と朱衡なんか簡単に出来そうだろ?」
「台輔……」
「俺達を何だと思っとるんだ」
同時に嘆息した二人に六太は、そうかぁ?、と首を傾げた。視線の意味は、やってみて。
朱衡は一瞬中空に意識を向けた後、ちらりと帷湍に目を遣った。視線に気付いて帷湍も朱衡の薄蒼の瞳を覗き込む。
「…………」
「…………」
しばしの沈黙の後、帷湍が眉を寄せて頬を掻いた。済まん分からん、と気不味げな様子に、朱衡は思わずというように小さく吹き出して微笑した。
「答えは?」
「今日の夕飯は魚が良いです、と申し上げました」
「は?」
分かる訳ないだろぉ、と頭を抱えた帷湍とそれにくすくすと微笑した朱衡を眺めながら六太は、なぁんだ、と肩を竦めた。案外駄目なんだな、と呟いて興味を失ったように、またぱっくりと饅頭にかぶりつく。
「じゃあ、お前等やってみろ」
六太は、は?、と目を点にした。
「自分達でやってみろ」
「誰と誰が?」
「台輔と主上が、でございますよ」
六太はぱちくりと瞬いて、正面の主を見遣った。そして直ぐに二人に向き直り手をぶんぶんと振って、無理無理、と真顔で言い放つ。
「こら、六太」
「いや、無理。だって分かんないもん。ていうか分かりたくない。絶対やらしいこと考えてるもんこいつ。俺に失道しろって?」
「では逆に俺がお前の考えを読んでやろう。それなら良いな?」
六太だけでなく、話を振った帷湍と朱衡、それに我関せずと会話に参加してこなかった成笙すら、珍しいものでも見るかのように不遜な主を凝視した。
それに尚隆の片眉が跳ね上がる。
「何だ?」
「いえ……少し、意外な気がしただけです」
「そこまで極悪非道とは思っとらんが…」
「なぁんか気持ち悪いんだよなあ」
「お前に慈悲深い麒麟の考えが読めるとは思えん」
眉一つ動かさずにしらっとした顔でずばり言って、成笙は眉間に皺を寄せた主に肩を竦めて見せた。思わず六太達ですら、うわあ、と視線に憐憫の色が篭る。
尚隆は一つ鼻を鳴らすと、ちょいちょいと六太を手招いた。ろーくた、と満面の笑みなのが恐ろしくて、六太は思わず首を振った。しかし、従わなかった時の仕返しもよくよく考えたら段々と恐くなってきて、六太は涙目になって主の傍へ寄った。
「俺の目を良く見ろ」
腕を引き寄せ六太を膝の上に座らせる。そして顎を掴んで視線を固定した。
「俺が言い当てたら、明日出掛けても文句を言うなよ?」
「好きにしろ。だが文句はしっかり言ってやるから覚悟しろ」
「主上がもし言い当てられなかったら、その時は拙達の言うことをきいて頂けますね?」
尚隆は、良いだろう、とくつくつと笑って改めて六太の顔を覗き込む。
「六太、当たったら当たったと素直に言えよ。隠し立てすると許さんからな?」
ええぇ、と嫌そうに顔を顰める六太の瞳を尚隆はじっと覗き込む。その様子を可笑しそうに見ながら他人事のように茶を啜っている官吏達が六太には恨めしい。
事実他人事なのが更に恨めしかった。
六太は黙考している主の瞳をじっと見つめ返しながら、尚隆が何事かを言い出すのかを待っている。
(どうせ当たらないし)
六太は尚隆が何を言っても否と答えるつもりだった。どうせ答えに困窮するようなろくでもない事を言い出すに決まっている。
もう状況からして一国の王と台輔の距離ではない。六太は今のこの状況すら蓬莱で言うところの『セクハラ』だと改めて思った。
絶対に当てさせない。というか小細工などしなくとも当たらないだろう、と六太は思っている。だから適当な答えを一応主に向かって念じてみる。
(尚隆のばーか、ばーか。悔しかったら口付けの一つでもしてみろー)
なんてな、と内心鼻で笑った六太だったが、次には一瞬で思考が停止する事となる。
「――んぅ、うぅっう、んー!?」
気付いたら主によって口を塞がれていた。がっちりと押さえられた顎と引き寄せられた身体。
それに六太が気付いたのは、咥内にぬるりと舌が滑り込んできてからだった。
抵抗しようと片手を振り上げたが、あっさり捕まえられてしまう。しかしそのお陰で顎への拘束が無くなり、六太は思い切り顔を振って無理矢理に口付けを終わらせた。
真っ赤になって睨み付けた顔には、ニヤリと人の悪い笑み。
「何すんだこの昏君!滅王!変態!」
「王を捕まえてお前こそ何を言うのだ」
「だって――!」
「俺は、そのあいこんたくととやらでお前の考えを読んだだけなのだがな?」
はあ!?と目を真ん丸にした六太に尚隆口の端を吊り上げて笑う。
「口付けて欲しかったのだろう?――物欲しそうに見ていたではないか、ここを」
とん、と示された口許に、六太はまた、かっと顔を赤らめ、違う!、と叫んだ。
「違わんよ」
「違う違う!俺物欲しそうになんか見て――」
「では、口付けして欲しいと思っていたのは当たりだな?」
にんまりと笑った尚隆に、六太は更に真っ赤になった。
「これは……」
「どうやら拙達の負けのようですね」
ふぅ、と嘆息した朱衡の横で帷湍が苦み走った顔で頭を抱えた。
「ん?どうした?何だもっとして欲しいのか?」
「お、おま、お前…お前ぇ!!」
涙目でばんばん尚隆の胸を張る六太に、尚隆は嬉々として腰を引き寄せ顔を近付けている。
朱衡はゆったりと卓から立ち上がると、明日の分の書簡を取って参ります、と帷湍に告げて部屋を出て行った。やる気なく返事を返し帷湍が顔を覆って天を仰いぐと、はあ、と成笙が肩を竦めた。
目の前では、まだ元気に主達はじゃれ合っていた。
友人と自分とこの尚六の話をしておりまして、「アイコンタクとは出来るか否か」という話題になり、友人は熟年夫婦並みに出来る、と言ったにも関わらず、私はアイコンタクトする前に行動しちゃっているから出来ない!と断言。そしてこのアイコンタクトネタが生まれました。ろくでもないことは分かるみたいだよ尚隆さん!
うちの六太は態度があからさまだから目見なくとも分かると思うんです。逆にアイコンタクトの方が難しいと思う。尚隆さんは基本ポーカーフェイスだから六太にゃ分かりません。雰囲気でなんとなく読む感じ?アイコンタクト無理!!
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