・尚隆×六太です。
・三官吏が出番大ですが…尚六です。
・それでも宜しければ続きからどぞ。
朱衡は不意に足を止めた。
隣を歩いていた帷湍が朱衡の視線の先を追って庭院へと目を転じた。
「あんの野郎…!」
帷湍は額を押さえて思わず天を仰いだ。そして苦み走った顔でずかずかと庭院に踏み入る。
帷湍、と小さく朱衡が呼ぶ声がしたが、構わず池を横切ってそのほとりにひっそりと佇む阿舎へ足を進めた。
朱衡は困ったように一つ嘆息し、帷湍の後を小走りに追い掛けた。
さやさやと暖かい風が池の上を渡ってきて、帷湍と朱衡の衣を揺らしていく。目指す阿舎の一辺にも柳がしな垂れかかり、その葉をゆらゆらと風に遊ばせている。
歩く二人の目は、そんな阿舎の中に二人の人物を見付けていた。その一人がこちらを見て迎えるように近付いてくる。いつも隙無く動く彼が、何故かゆったりと音を忍ばせてきた。
帷湍はそれを訝しみつつも、もう一人の人物を睨みつけ、耐え切れずに阿舎に踏み込む前に怒鳴った。
「こんの昏君……――っ」
「――し…」
が、声を止められた。乱暴に口を片手で塞がれ、帷湍は目を白黒させつつ塞いだ犯人の顔を不服そうに見遣る。成笙、と相手の名を唱えても上手く音にはならない。ご丁寧に鼻まで塞ぐものだから呼吸すら止められてしまっていて、自然と恨みがましい視線になってしまった。
「……帷湍」
宥めるように背中を叩き、朱衡が困ったように見上げてくる。
しぃ、と薄い唇に人差し指を立てて、音を潜ませるように指示した。同じように指を立てて頷いた成笙が、手を離して手招きをした。大人しく呼ばれるままに先程怒鳴りかけた相手へとそろそろと近付く。
相手はこちらに背を向けたまま池に面して置かれた長椅子にゆるりと座っている。時折ぱらりと料紙をめくる音がして、何かを読んでいるらしい事が分かった。
成笙に、前に回ってみろ、と促され、帷湍は一呼吸置いてからぱっと相手と阿舎の欄干との間に身を滑り込ませ――――目を丸くした。
「台輔…?」
思わず滑らせた口を慌てて自らの両手で塞ぎ、帷湍はまじまじと目の前の光景を見遣った。
怒鳴りつけようとしたのは自分の主。背凭れに悠々と寛ぐ彼の膝の上には、陽色の髪をした少年が心地良さそうに寝息をたてていた。
帷湍の声に意識が浮上したのか、ピクリと反応をして身じろぐ。しかし何事もなく再び静かに寝入った様子に、帷湍は息をついた。丁度目が合う形になった主は、膝の上の少年を片腕で抱き寄せその小さな肩をぽんぽんと撫でた。次いで帷湍に苦笑して見せる。
「悪いな。こうもあどけなく寝られてしまうと、起こす気にもなれん」
餓鬼をあやすのは苦手なんだがなあ、と肩を竦めた主は、珍しい事もあったものです、とくすくすと忍び笑いを零した朱衡に、まったくだ、と嘆息した。その様子に成笙も口の端を緩めた。
「朱衡、台輔が寝ていると知っていたなら止めないか。良い恥晒しだぞ」
「お止めしましたよ。でも、最後まで聞かずに貴方はずんずん歩いていってしまわれたから」
「う…そうだったか」
憮然と朱衡に口を尖らせた帷湍は、しかし直ぐに恥ずかしそうに頬を掻いた。いっそ起こしてくれて構わんかったのだがな、と笑い含みに言った主を睨みつけ、帷湍は腕を組んだ。
「今日は仕方がないから大目に見てやる」
「珍しいな。逃がしてくれるのか?」
「仕方なかろう…誰かと違って台輔は昨日遅くまで仕事をしていたからな。朝帰りしてきたどうしようもない奴でも枕代わり位にはなるだろう?」
一国の王を枕と一蹴した帷湍に、当の本人がくすりと苦笑を零す。
「全く。台輔に甘いな、お前等は」
「お前程じゃない。一緒にするな」
王はぱちりと一つ瞬いて、違いない、と肩を震わせた。
小さく息をつく少年の頬を指先でむにむにと触りながら、得だなあ、この顔は、とぼやいた顔は、確かに優しげだった。
皆六太に甘いって話。
終いにゃ「六太、起きないか」って尚隆にちゅーされて起こされます。「ぎゃー!変態変態!」ってなって殴られます。台輔の愛の鞭(違うよ)
そして「良い度胸だ。たっぷり可愛がってやろうではないか」って寝室直行。ちーん。
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