・結構景麒に関して妙な角度で盲目なので、原作の景麒と若干違います。多分。本人自覚なし。
・それでも宜しければ続きからどぞ。
ひらひらと手招きながら自分を呼ぶ声に、景麒は複雑な顔でそれに応えた。
「この件だが…」
自分を覗き込むようにした主の瞳から逃げるように目を逸らし、問われた案件に自らの意見を返した。
そうか、と言って考え込む横顔を眺めて、景麒は心中でそっと溜息をついた。
ふぅ、と息を吐き出し、景麒は晴れた透明な空を眺め遣った。
「…………はぁ」
吐き出すようにして出した息に、思わず顔を顰める。
今日は溜息ばかりついている気がする。
一旦自覚すると気になって仕方がなくなる。
そう言えば、昨日も一昨日もそうだった気がする。
(なんだ――?)
疲れている訳では決してないというのに。
景麒はぼんやりと庭院に咲いている花々に目を遣ったが、その瞳にそれらが映る事はない。
さらりと微風が柔らかな淡い金の髪を梳き撫でていったがそれすら気にならない。
「どうしたというのだ」
一人ごちて景麒はまた嘆息した。
と、ゆるりと顔を上げ庭院に続く回廊を見据えた。
近付いてくる気配に強張る身体とは裏腹に、モヤモヤとした胸の内がホッと温まっていく。
「此処に居たのか」
微笑みながらパタパタと自分の傍へと寄ってきた主は、はあ、と一度目の前で深呼吸をした。ふんわりと赤毛が風に揺れる。
景麒は急に込み上げた何かに、思わず口許をゆったりとした袖で隠した。
しかし、そんな景麒の可笑しな行動など気にした様子もなく、陽子は肩に落ちた長い髪を背中へ押しやった。
「探したんだぞ、景麒。聞きたい事があったから」
やっと見付けた、と安心したように朗らかに笑った主に、景麒は眉を下げた。
(本当に私はどうしたのだろう…)
主に探させるなんて事、謝らなければいけない事なのに。
嬉しい、と。
喜ぶ自分がいる。
姿の見えない自分を、自ら探してくれた事が、情けない程に嬉しい。
「景麒?…どうした?」
主が不思議そうに首を傾げた。
あぁ、今私は可笑しな顔をしているに違いない。
何でもありません、と背けてしまった顔。主は叱るだろうか。
少しの後悔。
しかし、彼の方は予想を裏切って小さく吹き出して笑った。
「変なの。でも普段からそういう顔したって良いんだぞ?私はそっちの方が好きだ」
可笑しそうに笑いながら私の顔を覗き込む。
私は急に溜息の理由に思い至る。
「…………主上がお笑いになって下さるなら、私も善処致しましょう」
王座に就いたばかりで政務に打ち込む日々。
段々と笑わなくなった主。
思えば、出会った時からあまり笑った顔を見たことがなかった。
だからだ。
「そう言えば、お前とこうして下らない話で笑ったりした事無かったな。顔を合わせれば二人揃って仕事の話ばかりだったっけ…」
驚いた後、直ぐに考え込むように腕を組んだ主は、自らに言い聞かせるように、うん、と一度頷いた。
ぱっと顔を上げてニヤリと人の悪い笑みを浮かべる。
「分かった。私も笑うから、約束通り景麒も笑うんだぞ?」
そう言って眼前で小指を立てた主に、景麒は目を丸くした。何の合図か分からなかったからだ。
すると主はきょとんと首を傾げた後、あぁそうか、と一人ごちて私の片手を取った。
同じように小指を立たせて、主のそれに絡める。
「あちらでは、約束をする時にこうするんだ。指切りと言う」
指切った、という不穏な台詞とは裏腹に、繋がった指は温かい。
ところで仕事の話なんだが、と言って懐から出された書簡を示した主は、少し気不味そうに景麒を仰ぎ見た。
景麒は苦笑した。
「お読み致しましょう」
主は一言、ありがとう、と言って笑った。
万里を読む前に書き始めたブツ。
まさか嘆息ネタが被るとは思わなんだ。ま、意味合い違うし大丈夫★という安易な考えから仕上げてアップしてみました。
うちの台輔連中は王にメロメロ過ぎる。
仕上げる際にたまたま景麒恋しさに迷宮を掻い摘んで読み返した為か、景麒熱が今異常。
景麒可愛いよ景麒。
十二国記にはめた友人が「まさか景麒にそんなはまるとは…」と憐れむような声を出したのを覚えています。
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