★諸注意★
・東京鬼祓い師で、主人公×壇です。
・主人公の名前はデフォルトの「七代千馗」。
・壇LOVE、壇一番で、優先順位の最上位はいつも壇。
・壇も満更ではないが、恥ずかしいので唯の『親友』と言い張っている。
・二人の関係は周知の事実。
・ラブ度かなり低めな上主人公がずっと暗ーくなってますが、それでも宜しければ続きからどぞ。
黒茶のなんて綺麗なこと。
見返された瞳を見て、千馗はぼんやりと思った。
「おい、千馗!大丈夫なのかよ!?」
叫ぶ声に、千馗くん、と泣きそうな声が混じった。
「燈治…み、のり?」
掠れた声が出た。
それで一気に弥紀が涙ぐんでしまって、慌てて笑う。が、燈治までも口を引き結んだ事からして、どうやら上手く笑えなかったらしい。
「ばか…や、ろぉっ」
燈治の声に、悪かったよ、と苦笑して、やっと千馗は自分が倒れた事を知る。あぁ、支えてくれたんだ、と痛みのない身体と抱き抱えている燈治を見比べて息を吐いた。
――――不甲斐ないな。
気付けば弥紀が手を握ってくれていた。ほんのりと温かい力が手から全身へと緩やかに巡っていくのを感じる。
「弥紀、ありがとう。…ごめん、もう少しだけ、こうしていて良いかな」
今は指先一つ動かすのも億劫だった。これ以上一人でフラフラとしている場合じゃない、と自分に言い聞かせる。それでも半端な矜持がずきりと痛んだ。
燈治もごめん、と瞼を閉じる。すると抱え込まれていた頭を動かされた。
(あ、膝枕?)
少し固い気がするけれど、後頭部が温かくて気持ちが良い。手慣れぬように前髪を梳いてくれているのは、きっと燈治だ。弥紀の力が作用しているのか、不思議と燈治が触れた額からすっきりと気分が軽くなっていく。
――――ぶつかった。
手の平から巡る弥紀の力が、ぐるりと一周してから、額から流れ込む燈治の力にぶつかったのが分かった。しかし反発するでもなく、むしろ調和し増幅されて大きくなり、それが繰り返されるにつれどんどん膨らみ温かいものへと変わってい
くのに気付く。
ふわふわとした浮遊感に、千馗はゆっくりと息を吐いた。
千馗、と呼ぶ声はどちらのものだろう?
急速に落ち込む意識の中で、千馗はなんとなく頷いて見せた。
起きて直ぐに違和感に気付いた。
「眼が…」
茫然と呟かれた言葉に燈治が振り返る。
「千馗くん?」
心配そうな弥紀の声が背中に掛かり、そちらに振り返らずに首だけ振った。大丈夫、と告げるが、そう、と返された声に不安げな色が帯びた。
「どうした?」
「いや、気の所為だったみたいだ」
あやふやに返すと、燈治の片眉が上がった。何事か言いかけて、しかし直ぐに口を引き結んだ彼は、無茶すんな、とそれだけ言って正面を向いて歩き出した。
ぐぐっと胃の辺りが強く押されたような気がした。
それと同時に、洞が薄暗くて良かった、と息を吐いた。今、自分の眼は常とは違っている。
そっと瞑ってから、意識的に開く。
しかし、予想していた景色は現れなかった。
(秘法眼が…)
開いている、というのか、変化している、というのか。感覚的な事過ぎて上手く表現出来ないが、今自分の眼は常の眼ではなく、秘法眼と呼ばれるものに変わっていた。
幼い頃は無意識に使っていたそれが周りとは異質なものと知ってから、千馗はその眼を極力使わないよう努めてきた。
奇異な能力。人の身体が異物を受け付けないように、人もまた異質な存在を排除しようとする。
元からの人懐っこい気性に助けられて、今までは上手く立ち回ってきたが、流石に秘法眼を他人に見せた事は無かった。唯一の例外は、同じ秘法眼を持った者だけ。
(このままだと、不味いな)
花札集めの仲間であり、札憑きの二人だが、この眼を見たらどう思うだろう。
札憑きとは言え、元は普通の高校生に過ぎない。
この眼を見たらどう思うだろうか?
孤独になった事はないが、孤独を感じたことはあるのだ。自分の眼は、周りとは
違う。それが畏ろしくてたまらなかった。
「千馗?」
俯いていた為に、燈治が立ち止まっていたことに気付かなかった。顔を覗き込ま
れて、慌てて顔を背ける。眼を伏せたのを悟られないように、にっこりと笑う。
「燈治、どうした?」
疲れたか、と肩を叩いて前に出る。後ろを歩く事になった二人に自然と顔が見え
ない位置。
そのまま振り返りもしない千馗に、苦渋の濃い声が掛かる。
「無茶、すんなよ」
一拍置いてから、あぁ、とだけ返す。
――――最悪だ。
心配をかけさせている。悪いのは俺なのに、きっと二人とも自分を責めてしまっている。
そんな事ない、と。俺は大丈夫だ、と言えたら良かったのに。眼も合わせずに言う言葉にどれだけの意味があるだろうか。
(どうして急に…っ)
弥紀の力に影響されているのか。はたまた、秘法眼の使い過ぎか。
倒れたのも、秘法眼を使っていた時だった。
慣れて、しまったのだろうか。
負担を減らそうと、身体が勝手に眼を順応させてしまったのか?
(どちらにせよ、長くは続かない)
負担は減ったが、結局消耗はしている。時々貧血のように軽い眩暈が来るのがその証拠だ。いつもより長時間使えているのは、それこそきっと弥紀の力。
――――あと、少しだけの我慢。
あと少しだけ我慢すれば、きっと戻るはず。
二人を信じていないわけではない。
それでも、やっぱり未だ自分には一歩踏み出す事が出来ない。
千馗は両眼を覆ってひっそりと嘆息した。
前向きに見えて臆病者な七代さん。猫被りが得意ですが、周りには無茶してるってバレバレです。
守らなきゃ、とか、なんとかしなきゃ、と思うあまり、周りに頼る事を忘れていたりするので、いつもぶっ倒れて心配かける羽目に。周りとしてはもっと頼って欲しいし、そんなに無茶しないで欲しいと思っているけれど、なかなか七代が頑固で言う事を聞いてくれないので、こっちでなんとかするしかないと思ってます。
最初の内は(秘法眼を)見せてと言われても「嫌だ」って言って逃げ回ってそうですが、戦闘中にどうしても使っていなきゃいけなくなって見られてからは、妙に開き直ってバンバン使ってます。
ただ、やっぱり見られるのに抵抗はあるので、茶化して逃げたりはしています。
やっぱり臆病な主人公(笑)
ちなみに燈治の膝枕はこれが初めてではありません(どーん)
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