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★諸注意★
・東京鬼祓師で主人公×壇です。
・主人公の名前はデフォルトの「七代千馗」。
・壇LOVE、壇一番で、優先順位の最上位はいつも壇な主人公。
・壇も満更ではないが、恥ずかしいので唯の『親友』と言い張っている。
・二人の関係は周知の事実。
・ラブ度低めな上ちょっと短めですが、それでも宜しければ続きからどぞ。






「とーじー、新作味見させて」
「良いぜ」

口を開けると、直ぐにスプーンを入れられた。それと一緒に口に含んだ刺激物をモグモグと咀嚼し、千馗は、うん、と眉を下げた。

「相変わらず辛旨だな」

ぺろりと飲み込んだ千馗に、俺は少し辛い、と燈治が舌を出した。辛いもの好きだが、限度があるらしい。彼は実はそれ程辛党ではない。一般人より少し強いくらいらしい。
それなのに好物はカレーって、と千馗は内心で苦笑した。道理だなんだと格好良い事を言うくせに、好物は幼い子供の代表格だなんて。

(可愛過ぎる)

水のコップを片手に果敢に挑戦していく燈治を見ながら、千馗は笑み崩れた。と、同時にカウンターに座った千馗の目の前に、どんっと皿が突き出された。

「今日のオススメできないカレーお待ちどーでござるヨー!」

笑顔の店主と突き出されたものを交互に見遣る。

「食べ物?」
「食べ物」

即答された。
いきなり真顔になった店主から目を逸らし、食べ物であるだろう物体に向き合う。横で燈治が固まったのを感じる。

「いただきます」

例え色が食べ物に有り得ない青色だったとしても。
例え入っている食材が一見して分からなくとも。
食べ物を粗末にする事は出来ない、と腹を括って、千馗は勢い良くカレーであろうものにスプーンを差し込んだ。口許まで掲げると、見た目とは裏腹にスパイスの良い匂いが鼻腔をくすぐる。
ようは味だ。味。
目隠しをした状態だったら素直に口に入れるのだろうが、外観を知ってしまった以上、今から目を瞑っても遅い。しかし千馗は足掻くように瞼をぎゅっと閉じると、一息に口にスプーンを運んだ。

「…千馗?」
「………………」

スプーンを入れたまま硬直した親友を、燈治が恐る恐る見遣った。

「大丈夫か?」

こっくりと頷き、もぐもぐと活動を再開した千馗に燈治はホッと息を吐いた。しっかり飲み込んだのを確認してから水を勧める。受け取ってぐびりと飲んでから、千馗は何とも言えないような顔で燈治を見遣った。

「甘い」
「は?」
「すっごく、甘い」

指差されたカレーに視線を移す。

「これ子供用カレー並に甘いんですけれど」

店主にブツブツと不平を言いながら千馗がスプーンでまた一口カレーをすくった。素知らぬ顔で皿を洗う店主に唇を尖らせてから、千馗は、はい、と燈治にスプーンを向けた。
きょとんと燈治が目を丸くする。

「味見、しないの?」

はい、と再度カレーを突き付けられて、やっと燈治は意味を理解し、しかし訝しげに眉を潜めた。

「不味いんだろ?」
「不味いとは言ってないぞ。唯甘いだけだ」
「俺が甘いのが苦手だって知ってて言ってんのか?」
「それはお菓子とかの話だろ。これは平気だって。寧ろ、燈治好きなんじゃないかな」

にっこりと笑った千馗に、燈治は深く嘆息した。これは無理矢理にでも食べさせる気だ。ここで抵抗しても結局食べる羽目になるのなら、下手に機嫌を損ねる前に諦めた方が賢明そうだ。
燈治はちらりと千馗を見遣ってから、素直に口を開けた。

「ん」

あーん、と喜々として入れられたカレーに燈治がぱちくりと瞬くと同時に、ちょっと!、と厳しい声が飛んできた。

「あんた達、場所を弁えなさいよ!」

店の入口を見遣ると、巴が眦を吊り上げて肩を震わせていた。隣には楽しげな弥紀が手を振っている。
巴どうした?、と千馗が弥紀に手を振り返しながら問うと、巴は何か言いたげに口を開け、しかし直ぐに引き結んで額に手を当てた。

「巴はね、二人が凄く仲良さそうにしていたからびっくりしちゃったみたい」

ふふ、と笑って何でもないような顔で近寄ってきた弥紀に、燈治が、仲良さそう、と譫言のように呟いた。

「そうね。オブラートに包めばそうとも言うわね」

鼻頭の眼鏡を押し上げ歩いてきたと思いきや、だけど、と巴がカウンター席のテーブルを叩いた。

「…男同士で、あーん、は、如何なものかしらっ!?」
「!――ばっ、違っ!てめぇ何言って…っ」

二の句が告げず、その上一気に真っ赤になった燈治に、巴がもう一度テーブルを叩いた。

「ここは人様の目にも入る場所なの!イチャつくなら時と場所を選べって言ってるのよ!」
「イチャついてなんか――」
「済みませんでした」

隣で深々と頭を下げた親友に、燈治ははたと瞬いた。そして一瞬で状況を理解して、そこは謝るとこじゃない!、と千馗を怒鳴りつけた。

「肯定してるようなもんじゃねぇか!」
「え、事実だし?」
「事実じゃねぇだろうが!」
「でも、実際食べさせ合いっこはしたぞ?」

ほーらイチャついてた、と肩を竦めた千馗に、燈治はふらりと眩暈を覚えた。血が頭に上り過ぎてくらくらする。
席にぐったりと座り込み、テーブルに突っ伏す。途端に気分が悪くなって食べた物が逆流しそうだった。

「もう良い。叫んだら気持ち悪くなってきた…」

全く仕方のない奴ね、と巴が嘆息したのが分かった。同時に千馗が、あんまり虐めないでやって、と笑う。
お前も共犯のくせに。

(分かってんのか、馬鹿!)

自然と勧めて勧められてだったので、ついうっかりしてしまったが、良く考えて見れば恥ずかしい事この上ない。
それなのに当事者である千馗本人は、けろりとして巴と一緒になってからかってくる。
――――自分が悪いのだけれども。
注文お願いしまーす、と場に似つかわしくないほんわかとした弥紀の声を聞きながら、燈治は深く嘆息した。



 「可愛いなぁ」
「お前、次は容赦なく顔面だからな」
「仕方ないだろ、本当に可愛いんだから」
「あぁ、もうお前は…っ」
結局負けるのはいつも燈治です。
うちの七代さんは機嫌損ねると無茶苦茶やるので燈治が早めに負けます。保健室で押し倒されたり、廊下でいきなりキスしてきたりするので。
そして巴は公共の場以外でだったら何も言いません。
「TPO考えなさいよ」
「俺に言わないで千馗に言え!」
愛され燈治(笑)
でも、あーんは本当に普段からやってそうです。

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