・九龍妖魔學園紀で皆守×主人公です。
・主人公の名前はデフォルトの「葉佩九龍」。
・続きモノです。
・それでも宜しければ続きからどぞ。
It's a beautiful days.② 『細道の奥』
面倒だ。
ふとした瞬間に絡み付く気配が。
無関心を装ったくせに、ふとした瞬間に向けられる視線が。
言いたい放題言って置いて、ふとした瞬間に黙り込む口が。
元から余り他人と馴れ合わないのだろう性質に加え、妙な時期に転校してきた自分を警戒、というか、不審がる気持ちは分からないでもないが、いっそ周囲にも分かり易く振る舞ってくれれば良いのに、一般人レベルには気付かれないその言動が面倒で仕方がなかった。
だから綻びを作った。
正体をばらして様子を窺えば、呆れたような顔で俺を見ていた。警戒するのも馬鹿らしい、とはっきり書かれたその表情に一安心。自分では完璧だと思っていた猫かぶりが彼にはバレていたりと、何かと不審を煽ることしかしていなかったので、これで少しでも警戒が薄れてくれれば、と息をついた。
いや、警戒が薄れるどころの話ではなかった。
こういう奴なんだと割り切ったのか、初め程の警戒がなくなった為に逆に面倒な事になった。
取り敢えず打つ癖をやめろ。身の丈にあった武器を使え。保健室では騒ぐな静かにしろ。
…なんなんだ、あの口煩さは。
途端にあれやこれやと口を出され手を出され、ある意味正体を明かす前より自由がなくなった気がする。
しかし残念な事に、世話を焼かれる事は非常に楽だった。小言にさえ目を瞑れば、実際甘えたい放題なのだ。既に通用しない作り笑いでも、駄々をこねると、仕方がないな、と仏頂面で助けてくれる。なにくれとなく先回りする言動が、いつの間にか楽で楽で仕様がなかった。
他人に頼らないで、なんて格好つけたつもりはないが、こんな風に寄り掛かっているのが楽だなんて知らなかった。
素っ気ないし、変わらず警戒されて逃げられる事もあったけれど、いつの間にかお互いの部屋でまで一緒にいる事も多くなり、気付けば就寝以外はまるっと一緒、という事も少なくなかった。
えぇと、しっかりしろ俺。
確かに傍にいると楽だし、世話を焼かれるのにも小言にも慣れた。
わざわざ取り繕う必要がない点なんて、素晴らしい利点だ。始終愛想笑いしているのにも限度はあるし。
――――ただ、それだけ。
効率的。利己的って言った方が良いかもしれない。
自分が楽だから一緒にいるだけだ。…これでも、自分勝手だって分かっているつもり。
でも。
ある日クラスメートの女の子に、皆守くんは九ちゃんが大好きなんだね、と言われて驚いた。
大好き?誰が?
困惑をあからさまに顔に出してしまったら、気付かなかったの?、と呆れられてしまった。それじゃぁ親友失格だよ、と。
親友?誰が?
甲太郎が?
自分の中のボキャブラリーをひっくり返してみたけれど、あれは親友って言うカテゴリーに入れて良いのだろうか?この関係は、何?
いや、その前に、甲太郎が自分を大好きだって?
女の子って凄いなぁ。あの言動のどれをそう捉えられたのだろう。あれのどこに大好きオーラを感じたというのだろうか。
それとも、自分が気付かないだけだろうか?
自らのベッドに寝そべって、スパイス百選だなんてマニアック極まりない雑誌を読んでいる顔をじっと眺め遣る。大好きオーラ……カレーに対してなら見えるのだけれども、こんなに近くで見つめているにも関わらず、自分に向いているというその感情は全く読めない。
眠そうにしながらも、文字を追って左右に走る目に何故だか苛立つ。
「ねぇ、甲ちゃん」
「んー…?」
だからだ。
苛立ったから、つい、口が滑った。
「甲ちゃん、俺の事…抱いてくれる?」
絶句する顔が何だか可笑しくて、もっと見たくなってもう一度囁いた。
――――ねぇ、甲太郎の大好きって、こういう事?
罠発動。
九龍は未だ全く意識してません。
まだまだ友達どまり。
続きます。
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