・東京鬼祓師で、主人公×壇です。
・主人公の名前はデフォルトの「七代千馗」。
・壇LOVE、壇一番で、優先順位の最上位はいつも壇。
・壇も満更ではないが、恥ずかしいので唯の『親友』と言い張っている。
・二人の関係は周知の事実。
・今回微エロ警報発動中。
・少し短めですが、それでも宜しければ続きからどぞ。
うわっ、と呟かれた声と共に、どぼんと水飛沫が上がった。
「燈治!?」
振り向くと、船の縁にいた親友の姿が消えていた。そして足元の方からはがぼがぼと派手な水音。
待ってくれよ!、と千馗は目の前が真っ暗になった。慌てて船縁に寄って下を覗き込めば、親友が水の中から必死に手を伸ばしていた。
「燈治!こっちだ!」
「ぁっ…はっ…か、ずき!」
「頑張れ!」
伸ばされた腕を捕まえて、千馗は思い切り船の上に燈治を引き上げた。細身とは言えない燈治の体重に加え、水を吸って重くなった衣類が纏わり付いて、気を抜けば千馗も水の中へ引き摺り込まれそうだった。
しかし悠長に息を吐いている場合ではない。引き上げたと同時に、千馗は大急ぎで激しく噎せ続ける燈治の背を撫でた。
「大丈夫か!?」
「うわっ、しょっぺぇ!海水かよ!」
舌を出す燈治に、今度こそ千馗はホッと息を吐いた。至って元気そうだ。落ち着いた様子に眉を下げ、しかし千馗ははたと瞬いた。そしてまじまじと燈治を見返す。視線に気付いたのであろう。燈治が決まり悪げに千馗を見遣った。
「格好悪ぃのは分かってるからジロジロ見んな…っ」
拗ねたような声音に、惚けたようにしていた千馗は燈治から視線を逸らした。いやうん大丈夫大丈夫、と自分に何やら言い聞かせている。
「…悪い。えーっと、ほら、上着脱げよ。風邪ひくぞ」
「あ?…良いよこれくらい」
ぐちゃぐちゃに濡れた上着を脱ぐと、千馗が代わりに自分の物を渡してくれた。
しかし、千馗の物まで濡らしてしまうのも申し訳なかったし、どうせ全身濡れ鼠なのだ。上着一枚取り替えた所で差程意味はない。なので辞退しようと上着を突っ返すも、冷えるから!、と千馗は頑としてきかない。仕方ないので肩から羽織るだけに留めると、参ったなぁ、と呟きが落ちた。
そりゃあ参るだろうよ、と燈治は肩を下げた。足手まといの何者でもない。きっと千馗の事だ、このまま引き返すと言い出す事だろう。
うっかり船の揺れに足を滑らせなければ、と、自己嫌悪でどんどん気持ちが落ち込んでいく。と、千馗の指が前髪を梳いた。
「?」
顔を上げると、千馗の顔が間近にあった。じっと燈治の瞳を覗き込むだけでだんまりを決め込んでいる。意味が分からず首を傾げると、端正な顔が耳に寄った。
「燈治、凄くエロいんだけど」
何が、とか、誰が、とか、色々突っ込む事は出来たはずだったが、燈治は頭の中が真っ白になった。油の切れたブリキの人形のようにギチギチと緩慢な動作で千馗を見遣る。すると、ちゅっと耳たぶを吸われた。
「!、ば、なっ…かかかかかずき!」
「いやぁ、無理無理。我慢出来ない」
「馬鹿!ぉち、落ち着…け!」
「俺は至って冷静です」
ちゅっちゅっと音を立てながら千馗の唇が耳から首へ移動する。硬直から抜け出した燈治だが咄嗟の事に声しか出ない。
恥ずかしさとくすぐったさと少しの熱。
燈治は一瞬で顔に血が上った。
「かず、き…っ」
「そんなに赤くなって…誘ってるの?」
「馬鹿野郎怒ってんだよ、っん、ぅんん!」
怒鳴り声ごと口を塞がれ、そのまま後方へと押し倒された。船底に倒れ込む瞬間、千馗の腕が頭を支えた為後頭部強打は免れた。が、そんな事はこの際どうでも良い。
(このヤロ…っ)
容赦無くどんどん深くなるキス。舌を絡ませて吸われたと思えば、唇を啄むような軽いものに変わる。絶妙なタイミングで交互に行われるそれに、頭の芯が麻痺していく気がした。
「んっ、はっん…んっ、ん」
「ふ、ふふっ…あぁ、もう本当に参ったなぁ…」
やっと唇を解放され、燈治は荒く息を吸った。ぜいぜいと呼吸を繰り返しながら、いつの間にか口の端から零れていた唾液を手の甲で拭う。息を整えるのに必死になっていると、不意に名を呼ばれた。しかし、視線を上向かせる事しか出来ない。
「燈治」
燈治の瞳を覗き込む千馗は、額に張り付いた燈治の前髪を優しく撫でた。ぽたぽたと千馗の指にも水滴が移る。
濡れたままの肌と酸素不足の為に目尻に溜まった水滴を見つめて、千馗は困ったように笑った。
「そんなに可愛いなんて、反則だよ、燈治」
無意識なのだろうが、今の状態で上目遣いだなんて、どんな最強兵器だろうか。
これこそまさに、悩殺、と言うのであろう。
千馗は燈治の額にキスしながら頬の水滴を拭ってやった。
「てめぇ…急に何考えてんだっ」
「何って…聞きたい?」
立ち直ったらしい燈治が千馗の肩を押した。仕方なく上半身だけ起こすと、不機嫌を顕わにした顔があった。しかし未だ真っ赤なその様子に思わず苦笑する。
「誰だ…風邪ひくとか何とか抜かしていやがった奴は!」
噛み付かんばかりの勢いだが、千馗は全く気にした様子も無く、にこりと青紫の瞳を細めた。
「大丈夫だよ」
だって、と続けられた言葉に片眉を上げる。
「俺がこれから温めてやるから」
一拍後、燈治は千馗の両肩を掴み、そのまま両足の勢いも付けて脇に蹴り飛ばした。
「っざけんなぁ!」
計画通り、船の縁をあっさり越えて、千馗が水の中へと落下した。何が温めてやるだ。落ち込んだ自分が馬鹿みたいではないか。
ばしゃばしゃと爆ぜる水音と己の名を呼ぶ声に知らん顔をし、燈治はTシャツの裾を絞った。途端にくしゅんとくしゃみを一つ。
燈治は小さく鼻を啜りながら、力無く天を見上げた。
――――参ったのはこちらの台詞だった。
続きます。
そして思いっきりで済みません。
ちゅーくらいなら良いですよね?一応クッション入れましたし?
先日雨が降っていて、突然降りてきたネタでした。
びしょ濡れネタ。
雨だと路上とかになっちゃって流石になぁ、と思ったので、洞探索中にドボンしてもらいました。
一応春の洞ですが、春の洞に船が浮いてたかどうか甚だ疑問でございます(こらこら)
まぁ、そんな事もありますよね。
それから七代さんですが、彼は相当溜まってますね。理性とか忍耐とか大丈夫かと本気で思いました。やりたい放題やらせたらどんどんどんどん。途中で燈治が自力で逃げましたが、燈治まで雰囲気に飲み込まれていたら、あのまま最期までノンストップでした。私はそこまでする気はないから七代いいぃ!!!
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