・東京鬼祓師で、主人公×壇です。
・主人公の名前はデフォルトの「七代千馗」。
・壇LOVE、壇一番で、優先順位の最上位はいつも壇。
・壇も満更ではないが、恥ずかしいので唯の『親友』と言い張っている。
・二人の関係は周知の事実。
・ED後妄想ですが、それでも宜しければ続きからどぞ。
初詣の帰り道、千馗がふと名前を呼んだ。
「何だよ。どうした?」
「俺…大学行けなくなった」
澄んだ瞳が真っ直ぐにこちらを見ていた。
――――夏の後半にいきなり転校してきた千馗。しかし、自分とは違って頭の出来は良くて、直ぐに学年の上位陣に名を連ねた。そんな千馗だから、卒業したら大学に行くんだ、と笑っても、燈治にはごく普通の事のように感じられた。
「卒業、したら。戻って来いってさ」
「…………家族か?」
「いや、上司が」
短い返答に、改めて千馗との違いを突き付けられたようだった。
先程までわーわー騒いでいた浮ついた空気が急激に静まっていき、代わりに胃の腑にずんと重い衝撃が走った。今までの輪や長英の声が残響となって、耳鳴りのようにざわざわと鳴っている。
あーあ、と嘆息して、千馗が俯いた。
「同じ大学行きたかったなぁ」
それが心からの声だったので、燈治は、あぁ、とだけ返した。
俺だって、と言いたかったが、そんな事が言える立場ではなかった。卒業後の千馗の仕事は、大学生なんて生易しいものではないのだから。
頭では、そう理解している。千馗がこの学校に転校してきたのだって、本当は仕事の為だ。たまたまなのだ。たまたま問題が浮上したのがこの学校で、たまたま千馗が選ばれただけなのだ。
自分は笑って、頑張れよ、と送り出してやらなければいけない。それなのに、 唯々、千馗が遠くに行ってしまうと言う事実が胸に堪えた。
「燈治」
千馗が眉を下げて笑った。
「ごめん。傍にいてやれなくて」
「っ…馬鹿野郎」
やっと絞り出した言葉の、なんと可愛げの無いことか。
歯を食いしばる燈治は、まともに千馗の顔が見れなくなってそっぽを向いた。すると千馗の気配が近付いてきて、両手を握り締められた。のろのろと視線を戻すと、苦笑する綺麗な顔。
「だからさ、燈治…」
やめろ、と燈治は叫びそうになった。
言うな。その先は言うな。分かってるから。今は、未だ聞きたくない。
身体が強張った。両手を振り払って耳を塞ぎたい。
――――さよなら、なんて聞きたくない。
「俺と一緒に暮らさないか?」
「……………………は?」
別れを告げられると覚悟していたので、思わず反応が遅れた。
千馗が少しだけ首を傾げた。
「俺と一緒に暮らさないか?」
「い、一度言えば分かるから何度も言うな馬鹿野郎…っ」
思わず燈治は千馗の頭をひっぱたいた。と、急にくすくすと笑い始めた千馗に、力を入れ過ぎたか、と目を丸くする。
「悪い。思わず…」
「いやいや。なんのなんの」
「…………何笑ってやがる」
芝居めいた口調ににやけ顔。燈治は恥ずかしさを誤魔化す為に、千馗の胸を手の平で小さく押した。
「今、何考えてたか当ててやろうか?」
燈治の耳に口を寄せ、千馗がにやりと笑った。
「俺が、さよなら、と…言うとでも思った?」
「…!」
途端に赤くなった顔を腕で隠そうとすると、千馗がその腕を取って目を細めた。
「行かないよ」
青紫の瞳が笑みを深くした。
「お前を残して、離れたりなんてしないから」
喉が詰まった。
途端に目頭が熱くなった。
燈治は握られた腕を見下ろして、こっくりと頷く事しか出来なかった。
「戻ってこいって言われたのは嘘じゃない」
一緒に暮らそう、だなんて言い出した訳を聞いたら、千馗がニヤリと口の端を上げた。
「俺、卒業したらこの地区担当の封札師になるんだ」
「なるんだって…お前、それ辞令とか出てんのかよ」
「うん。平和的に話し合って分かってもらった」
平和的に、と胡散臭そうに眉を顰めた燈治に頭を掻いた。
「俺、呪言花札の執行者だろ?」
ね、と小首を傾げる姿に、燈治は一度頷いてから、はたと瞬いた。
「……脅したのか」
「いやぁ?うちには可愛い白い烏と黒い子鬼ちゃんがいるんですって言っただけ」
花札の番人を盾にしやがった!
燈治は、うわ、と呻いた。
端からこいつはそのつもりだったのだ。呪言花札の執行者だという切り札をたたき付けるつもりだったのだ。
きっと主に甘い、あの番人達の事だ。簡単に千馗に荷担したに違いない。
白はともかく、雉明に至っては主への懐きっぷりは度を越している。千馗の一言で敵に回る恐れがあるのだ。千馗の上の連中も、出来ればそれは避けたい所だろう。
「住む場所は斡旋してくれるらしい。まぁ、曰憑きの物件を自分でどうにかしろって事だろうな。都内で家賃三、四万なら文句無い」
「三、四万!完全にハズレじゃねぇか!大丈夫かよそんなところで!」
目を丸くした燈治に、千馗は、ふふん、と鼻を鳴らした。
「俺を誰だと思ってるんだ。数ヶ月で呪言花札問題を解決したこの俺を…」
一瞬遠い目をした千馗に、燈治も渇いた笑いを返した。なんだか凄く大丈夫な気がしてきた。
取り敢えず今はマスターの所で金稼ぎだなぁ、と呟いた千馗が、それでさ、と燈治を見遣った。
「お嫁さんに来てくれるの?」
飲み物を飲んでいなくて本当に良かったと思った。絶対に千馗の顔に吹き出している。
燈治は片手で口許を隠した。最悪だ。顔がにやける。顔から首に掛けて熱が上がっていくのが分かった。
非常に嬉しい。即答したい程。
しかし、それは同じ位恥ずかしい上に、駄目過ぎる甘えだ。ふと、無力な自分が足を引っ張る。
――――俺で良いのだろうか。
心許なくなって見返した顔は、そんな懸念など一瞬で吹っ飛ぶ程の全開の笑顔で――――燈治は唯一言、前向きに考える、とだけぶっきらぼうに言い放った。
素直さが欲しい、と後悔しても、既に後の祭りだった。
2010年9月時点で未だ未プレイなのですが、ED後妄想です。
白黒番人コンビは仲良く主の傍にいます。
七代は仕事で学校に行っていたので、卒業したらちゃんと封札師の仕事に戻るんだろうなあ、と思いまして。本当は高校自体出られるような状態じゃないのに、たまたま潜入先が学校だったから無事高校は出られたけど、大学は厳しいだろうな、と。
七代も半ば無理だろうなぁ、と思っていたけど、実際に駄目で少しがっかり。燈治と同じ大学生ライフを送りたかったに違いない。
そんな訳で、どうせ仕事するなら燈治の傍で!、と本部に
最強の切り札ですね。「何様?執行者様だけど何か?」(笑)
そしてうちの燈治はどうしてこんなにネガティブなのだろうか…。
素直になれよ!!と思いました。最後の一文は燈治のというか私の事です。もう抱きついちゃえよ!!!
ED後編の同棲★生活の話も書きたいなぁ。需要あるのかなぁ…………。
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