・九龍妖魔學園紀で皆守×主人公です。
・主人公の名前はデフォルトの「葉佩九龍」。
・続きモノです。
・微エロ警報発令中。
・それでも宜しければ続きからどぞ。
It's a beautiful days.④ 『霞みが匂う』
その顔は狡いんじゃないかな、と唇を引き上げる。
切羽詰まったその顔は嫌いじゃない、とか、ラベンダー以外の匂いがする、とか、どうでも良いようなことばかりが頭の中でぐるぐると回っている。
伏し目がちの睫毛が凄く長くて、瞳が半分くらいしか見えないな、と考えながら、時折上げられる視線に混じる、匂い立つような妖しさにこくりと喉がなる。
(なぁんだ。そんな顔も出来んじゃんか)
知らず唇がつり上がった。
しかし、そんな自分の様子がお気に召さないらしい皆守は、よく見遣れば端正なその顔を歪めて荒っぽく唇を重ねてくる。
「……っ」
ガチッと、勢いを付け過ぎて唇を挟んでお互いの歯がぶつかった。反射で引いた顎を彼の長い指が捉え、熱い舌が咥内に差し込まれた。少々拙い舌遣いにも直ぐに慣れて、逆にこちらから舌を絡めて吸ってやると、自覚しているのだろう、眉間の皺が一本増やされた。
「…っん、ん」
首に腕を回せば途端に口付けが深くなって、指が胸元を滑った。
荒っぽく、それでもやっぱりどことなくぎこちなくて。
可愛いとこもあるじゃないか、なんて場にそぐわない微笑ましい気分になって、ふわりと柔らかい髪の中に指を入れて梳いてやる。額を覆う前髪を掻き上げた。
ほら、こっちの方が良く見えるでしょ?
開けた視界を皆守がちらりと上げた。
「……?」
一瞬の逡巡。
皆守は気付いただろうか?
掠めるようにキスをして、耳の後ろに痕を残していく彼の表情を追えば、やはり見間違えではなかった。
(甲太郎…泣いてるの?)
唯の顰め面だと言われたらそうなのだろうけれど。
涙だって零れていないし、どうしてそう思うのかは自分自身さっぱりだけれど。
苦しそうに見えて、思わず口付けを強請って呼吸まで確かめて、酷く荒い息遣いに安堵した。
ねぇ、甲ちゃんどうしたの?
流された自分に嫌気がさしているだけ?
気付いていないわけないよね?
どうしてこんな事になっているのか。
どうして甲太郎だったのか。
俺の事、好きなんでしょ?
組み伏せたかったんでしょ?
全部暴いてみたかったんだろ?
全部思い通りになってるのに、思い通りにならない子供みたいな顔してるのはどうして?
ねぇ、そんな顔させたかったわけじゃないんだ。
今まで通りだったら、臭い愛の台詞なんか囁いたりしちゃって独占欲も丸出しで『俺はやったぜ』って勝ち誇るような奴しかいなかった。だから、どうして良いか分からない。
俺のものだって栄張って良いのに。
しつこく愛してるって言ってよ。
「こぅ…た、ろ…ぉ?」
笑って抱き寄せて口付けて。
彼は優しいと本当に思う。今だって、甲太郎作り笑いだって分かってただろ?
分かってて、いつもなぁんにも言わずに騙されてくれる。無駄に皆に笑顔を振り撒いたって、いつもなぁんにも言わないで合わせてくれた。
優しい優しい甲太郎。
おかしいな。
お仕事優先で、その為に落とした相手の気持ちなんて二の次だったのに、そんな顔されると困る。
短く軽く、啄むように繰り返される口付けに彼の真意を探ろうにも、そんな思い詰めた顔されたら気になって読めやしないじゃないか。流石に俺だって気にするんだよ?
ねぇ、甲太郎ってば。
困るよ。
やっと気になる存在に昇格。
それでも恋愛感情までは発展しません。頑張れ甲ちゃん。
でもネガティブ人間がどこまで頑張れるのかは謎です。
続きます。
この記事にトラックバックする: |
12/ 11/4 |
ALL TIME |
-- |
・剣風帖京主で直参 ・京主・天童外法主あり。 ・壬如・皆主あるかも? |
12/ 12/? |
冬コミ | -- |
・鬼祓師主壇で申込済み ・各新刊あり。 |
◆十二国記◆ ◆東京魔人學園伝奇◆ & ◆九龍妖魔學園紀◆ 魔人主受サーチ ◆東京鬼祓師◆ ◆応援&参加イベント一覧◆ 壇主壇アンソロ 壇きゅんにキュンキュンです! ALL TIME |